湖の女たち

2020
新潮社
あらすじ
琵琶湖ちかくの介護療養施設で、100歳の男が殺された。事件を捜査する刑事と、施設に勤める介護士——全く別の世界で生きてきた男女が出会ったとき、二人の人生は一変する。一方、週刊誌記者は、死んだ男の過去に興味を持ち、彼がかつて妻とともに暮らしていた旧満州を訪れる。 現代の日本と戦時下の満州、それぞれの愛を貫くために、女たちが出した答えとは……。
担当編集者ここだけの話
ある瞬間を、誰かと共有することで、自分の価値観が180度変わってしまう——。主人公の一人・佳代と同じ衝撃を、この作品の取材中になんと2回、私も経験してしまいました。一つは物語の舞台である琵琶湖の美しさを知ったこと。取材で訪れた比良山の雪景色や、余呉湖の風景は一生忘れられません。もう一つは、旧満州・ハルピンに現存する、憧れのクラシックホテル「ヤマトホテル」が、ホラー映画顔負けのホーンテッド・ホテルだったこと……。「ここ、絶対なんかいますよ!」と叫ぶ吉田さんの表情も、一生忘れられません。欲望、正義、それとも愛……極限まで追い詰められた時、最後まで手放すことが出来ないものは何か。読み手の人生が試される超問題作です。

(新潮社 F)

『湖の女たち』

吉田 修一
定価:1,600円+税
新潮社